配偶者居住権の活用法！老後も安心して暮らすための準備
相続診断士 FP技能士 乾浩一1. はじめに
「相続が発生したら、私はこの家に住み続けられるのかしら？」
「子どもたちとのトラブルにならず、安心して老後を過ごしたい…」
このような不安をお持ちの方は少なくありません。特に、相続によって配偶者の住まいが脅かされる可能性があることは、多くの家庭で問題となります。
こうした問題を解決するために、2020年の民法改正で新しく導入されたのが「配偶者居住権」です。
✅ 配偶者居住権とは、被相続人が亡くなった後も、配偶者がその家に住み続けることを法的に保証する制度です。
配偶者居住権を適切に活用することで、相続財産の分割を円滑に進めながら、配偶者が安心して住み続けることができます。
本記事では、配偶者居住権の仕組みやメリット・デメリット、具体的な活用法について詳しく解説します。
将来の住まいを守るために、ぜひ最後までお読みください。
2. 配偶者居住権とは？基本的な仕組みを解説
2-1. 配偶者居住権の概要
配偶者居住権とは、配偶者が亡くなった夫（または妻）の所有する家に、引き続き無償で住み続けることができる権利 です。
これは、相続の際に配偶者が不動産を取得できない場合でも、安心して老後を過ごせるようにするための制度です。
✅ 従来は、「所有権」を相続しないと住み続けることができなかった
✅ 配偶者居住権を活用することで、所有権を持たなくても住み続けられる
例えば、夫が亡くなり、相続財産として「自宅」と「預貯金」があった場合、
👉 従来の相続では、配偶者が自宅を相続すると預貯金が相続できず、生活資金が不足する可能性がありました。
しかし、配偶者居住権を設定すれば、
👉 自宅の所有権は子どもが相続し、配偶者はそのまま住み続けることが可能になります。
このように、配偶者居住権を活用することで、「住む場所を確保しながら、他の財産も受け取る」という選択肢が広がります。
2-2. 配偶者居住権の条件
配偶者居住権を取得するためには、以下の条件を満たす必要があります。
✅ 被相続人（亡くなった方）が所有していた建物であること
✅ 配偶者が相続開始時に、その建物に住んでいたこと
✅ 遺言や遺産分割協議で配偶者居住権が認められること
また、配偶者居住権は 「終身」 まで認められるため、配偶者が亡くなるまでその家に住み続けることができます。
3. 配偶者居住権のメリット・デメリット
3-1. 配偶者居住権のメリット
✅ 住む場所を確保できる
配偶者は、相続によって家を失うことなく、老後も安心して住み続けることができます。
✅ 相続税の負担を軽減できる
配偶者居住権は、不動産の所有権とは別に評価されるため、相続税の計算において有利に働く場合があります。
✅ 遺産分割が柔軟にできる
「不動産を配偶者が相続しないと住めない」という状況を避けられるため、他の財産（預貯金など）を配偶者が受け取ることが可能になります。
3-2. 配偶者居住権のデメリット
✖ 自由に売却や賃貸ができない
配偶者居住権を持つ建物は、所有者（例えば子ども）が勝手に売却することができません。また、配偶者自身も第三者に貸し出すことができません。
✖ 固定資産税の支払いが必要になる場合がある
配偶者居住権を取得すると、所有者ではなくても固定資産税の支払いが発生することがあります。
✖ 建物の管理責任が発生する
配偶者は、建物の維持管理を行う責任を負います。修繕費用も原則として負担することになります。
4. 配偶者居住権の活用法と具体例
4-1. 遺言書で配偶者居住権を設定する
配偶者居住権は、遺言書に明記することで確実に設定することができます。
「妻に配偶者居住権を認める」と遺言に記載することで、相続時のトラブルを防ぐことが可能 です。
4-2. 遺産分割協議で配偶者居住権を決める
遺言書がない場合でも、相続人同士の話し合い（遺産分割協議）で配偶者居住権を設定できます。
ただし、全員の同意が必要となるため、事前にしっかりと相談しておくことが重要です。
5. まとめ：老後の安心を守るために専門家に相談を！
配偶者居住権を活用すれば、「住まい」と「生活資金」の両方を確保することが可能になります。
しかし、遺言書の作成や相続税対策、不動産の管理など、専門的な知識が必要になる場面も多い のが現実です。
「配偶者居住権を活用するべきか？」
「相続税を抑えるにはどうすればいい？」
「子どもたちとトラブルにならないようにするには？」
このような疑問がある場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
老後の安心のために、今からしっかりと準備を進めていきましょう。
